最前列で映写幕を 第一幕「わたしはロランス」(監督グザヴィエ・ドラン)10

2023.08.30

◆題名「わたしはロランス」について

今まで述べてきたようにこの映画には仕掛けが多い。だからとてもわくわくして観られた。そして何といってもグザヴィエ・ドランは男女の感情の機微に長けている。言ってみれば「愛情」のプロなのだろう。

 原題は『LAURENCE ANYWAYS』最後の会話で「とにかくロランス」と訳がある。正しい文法ならanywayであり、sがつくなら軽さも出よう。しかしグザヴィエ・ドランなのである。これを「いくつかのロランス」と考えても構わないのではないか。男で女が好き。女で女が好き。これはロランスの二態である。また当初はフレッドも訝ったゲイではないかと。それはグザヴィエ・ドランにとっての自己表明でもあるだろう。それだけではない。ロランスの生き方、愛し方こそ自分のWayなのだと、言っているのではないだろうか。それが自分の好むことをする権利を捨てず、嫌悪され、忌み嫌われようと希望を持ち続けようという映画製作の態度にも貫かれていることが理解できるのである。

第一幕「わたしはロランス」【La Fin】


いがらしデンタルクリニック | 新橋 歯科
院長 五十嵐淳雄