いがらしデンタルクリニック

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最前列で映写幕エクラン

第一幕「わたしはロランス」監督グザヴィエ・ドラン


◆砂糖の瓶とイル・オ・ノワール 

 ロランスがカミングアウトした当初、二人の仲はそう悪くはなかった。家で友人を招いて4人でお喋りをしていた際に、珈琲のための砂糖が無いことに気付く。フレッドがスーパーに買いに行くのだが、思い出したように指折り数えて、何かを買いトイレに入って行く。次の場面で先日も一緒にいた妹を呼び出し、産婦人科の電話番号を調べさせるのである。ここでフレッドはロランスに内緒で中絶したことが分かる。彼の傍らで目覚めたいと言うフレッドであっても、将来を分かつ決心まではないのである。ロランスが同僚の医師とフレッドのことでノイローゼかもしれないとか的外れな話をしているときに、カメラはテーブルの上のものをアップし始める。それは砂糖の入った瓶とその背後に立てかけられたイル・オ・ノワールの島の写真である。この象徴的な描き方も見事だ。瓶の砂糖は同時に買った妊娠検知薬を暗示し、その結果ふたりで行こうと話し合っていたイル・オ・ノワールには行かれなくなるのである。それを暗示するかのように、画面は固まり、モノクロになっていく。

◆窮地に立たされたロランスが求めたものは 

  その後女装したロランスがカフェで何か書き物をしていると、一人の男が寄ってくる。何でそんな恰好なのか尋ねながら、肩に手を置かれた瞬間、ロランスは頭突きを喰らわすのであるが、逆に相手から手ひどい仕返しを受けてしまう。その手ひどい暴力的なスローなシーンに挿入するのがヒエロニムス・ボッシュの最晩年の作品「十字架を担うキリスト」の中のキリストを嘲笑、愚弄するユダヤ人の顔、顔である。これも自分たちと異なる者を嫌悪する者たちというアナロジーになるのだろう。

 彼は顔中血だらけにして、電話を掛けるため小銭を借りようとするが、誰も貸してはくれない。若い男が見かねて、うちに来て電話を掛けるよう勧める。そしてロランスが掛けた先はフレッドではなく、母親だったのである。ここにグザヴィエ・ドラン独特の恋愛観があるのではないか。しかし母親は父親に気兼ねして電話を切ってしまう。ロランスが最も精神的に追い詰められたとき、駆け込む場所は恋人ではなく、母親であったのだ。

次項「◆キレるフレッドとパーティ」へつづく→ →

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