いがらしデンタルクリニック

港区新橋の歯科 いがらしデンタルクリニック|駅前徒歩2分の歯医者
東京都港区新橋1-9-1 北川ビル3F 
診療時間:10:00-13:00/14:00-19:00 休診日:土・日・祝日  

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コラムvol.1~vol.7


vol.1 ●保険で義歯をなかなか作ってくれない

vol.2 ●一本の歯の価値

vol.3 ●よい歯医者の選び方

vol.4 ●良い歯医者の選び方があるなら・・・

vol.5 ●お口の中はブラックボックス1

vol.6 ●お口の中はブラックボックス2

vol.7 ●お口の中はブラックボックス3

vol.8~14 vol.15~22

vol.2 ●一本の歯の価値


 日々の臨床でつくづく感じることは、一本のの価値はどれほどのものかということである。私が横浜の場末で新米の勤務医をしていた頃、東南アジアの若い女性が治療に来たことがあった。保険証は持っておらず、付き添いの風体の良くない日本人が通訳であった。言葉も分からない国に出稼ぎに来ているのだなと漠然と考えながら身振り手振りと片言の英語で主訴(一番気になるところ)を聴いてみた。その上前を撥ねていそうな通訳君を介在させたくなかったこともあって直接のやり取りを試みると、左上の奥歯に痛みがあるとのこと、早速診てみると虫歯が露髄(神経が現れてしまうこと)しかかっていた。は根の治療をして再び修復出来ることを告げたが、何回も通えないと言われてしまった。もう一度口腔内を診ると歯の欠損が数箇所見つかった。一回の治療で終わらすには抜歯をしてくれという要望であった。日本の保険制度から外れているために、口腔内をより悪くする手助けをしなければならない役目を仰せつかったことになる。さすがに勤務医の身分で只でいいとは言えず(院長が激怒する顔が思い浮かんで)泣く泣く抜いた憶えがある。現在自分で経営している立場で言えば只で治療する覚悟さえあれば、悩む問題ではなくなる。このことは保険証を持たない日本人にも似た状況が惹起されやすいが、場合分けが必要ではある。
 その勤めていた歯科医院は、近くの警察署が拘留している未決囚の、急患時の引き受け医院であり、何人か治療(?)をしたことがあった。或る時に警察署から、当日の昼休みに一人連れて行きたいとの連絡が入った。患者の居ない時間にということらしい。三人の刑事が付き添いであった。まず出入り口の場所を聞かれ二ヶ所に二人が配置された。残りの一人に逃げる可能性はありますかと聞くと、自首して来たから大丈夫だろうとのこと。その痛みの有る口腔内を診ると残根状態(歯の冠の無い)のが十本あった。刑事に何回かに分けて抜きたいと申し出ると、今回外出させるのもやっとだったからと軽く却下された。手錠の旦那に今日十本抜いていいかいと聞くと、構わないとのこと。まあ僕が痛い訳ではないからと考えて、まず麻酔をした。効くまでに少し時間があったので、刑事さんに尋ねた。
「こういう場合も拳銃を持って来ているんですか。」「ああ、携帯しているよ。」
「ちょっと見せて貰えませんかね。」「だめだよ。危ないから。」
「少しくらいいいでしょう。僕だって余り嬉しくない仕事するんだから。」
「規則は規則だから。」これも敢え無く却下となった。その後で前科も十犯だと教えられマスクで顔を大きく覆って抜歯したが六本目辺りでギブアップされた。
 現在は患者層も悪くない立地なので特異な体験はしづらいが、残念なことは、社会全体が忙しいらしく歯を磨く時間を朝昼はともかく夜は十五~二十分くらい取って、糸楊枝や歯間ブラシも使って下さいと申し上げてもなかなか聞き入れられないことであろうか。失ってみて、もっと磨いておけばよかったは、遅いのです。もっと自前の歯でものが噛める幸せを意識してください。

ポリスマガジン 2007年4月号


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